これも米原万里『打ちのめされるようなすごい本』で知った一冊。図書館で借りて半分も読まないうちに☆5つ付けたくなった。
鄧小平の改革開放路線による市場経済導入で激動する時代。ゴミ捨てなどのマナーの悪さや、客から一元でも多くむしり取ろうとする商売人。一方で、見知らぬ旅人である筆者を暖かく迎え、精一杯もてなす人たち。ステレオタイプな理解や皮相なイメージを超える「チャイニーズ」の日常が、日本人や日本社会との対比の中であざやかに描かれる。
星野さんについては名前も知らなかったが、本書がデビュー作であるということにも驚く。旅行記というよりも各章が一篇の物語のようだ。あの『深夜特急』にも劣らぬ傑作だと思う。
ちなみにアマゾンにはKindle版か古本しかなく、全部読んだ後に結局Kindle版を購入した。文春文庫ではモノクロの写真がKindle版ではカラーであること、Kindle版には「電子版序文」があることに気付いた。