このブックレットを買ったのはもう随分前だが、冒頭の発言者が中村哲さんだった。中村さんの言葉は、数多の政治家その他の人たちが机上で語るようなものとは比べ物にならない強さを持っている。
「実際に、戦争をしない国・日本の人間である、日本人である、ということに守られて仕事ができた、ということが数限りなくあった」「9条を変えて『軍隊を派兵できる普通の国になるべきだ』という論理の、その『普通の国』の意味がよくわかりませんね。そんなことを言うのは”平和ボケ”した、戦争を知らない人たちの意見なのではないでしょうか」
護憲派を「平和ボケ」と断じる言説を時折目にするが、中村さんはその同じ言葉を使って、そのような意見を一蹴する。
美輪明宏さんの心からほとばしるような言葉を、今の為政者はどう聞くのだろうか。
「今の政治家は戦時中の軍人と同じです。そういう連中が、憲法改正、改正と言って、また日本を戦争にひきずりこもうとしている。彼らこそ非国民です」「次は徴兵制度でしょ」「いいじゃありませんか、自分の夫が、ボーイフレンドが、わが子が、孫が、家に帰ったら赤紙一枚で出征させられて」「また戦時中と同じように、日本中が老人と女子どもだけになればいいんです」
敗戦後75年となる今年。本書は15年前に刊行された小冊子だが、今でも一読に値する。
ちなみに「憲法変えて戦争へ行こう」というタイトルが秀逸。実際には小さいフォントで「という世の中にしないための18人の発言」と続くのだが。